『ミトンとふびん』


互いに事情を抱え、母親達の同意を得られぬまま結婚した外山くんとゆき世。

新婚旅行先のヘルシンキで、レストランのクロークの男性と見知らぬ老夫婦の言葉が、若いふたりを優しく包み込む(「ミトンとふびん」)。

金沢、台北、ローマ、八丈島。

いつもと違う街角で、悲しみが小さな幸せに変わるまでを描く極上の6編。

第58回谷崎潤一郎賞受賞作。


友人・親・たいせつな人を失った。

それでも日常は続いていく・・・

人生の痛みや喪失感をかかえながら暮らすことを描かせたら右に出る者はいないのでは、と思ってしまう吉本ばななさん。

まるでエッセイを読んでいるかのような温度感が、愛おしい作品でした。


母子家庭の登場人物が多いのは、ばななさんご自身が離婚を経験し、シングルマザーの時期があったからなのでしょうね。


『よりさりげなく、より軽く。
しかしよりたくさんの涙と血を流して。
この本が出せたから、もう悔いはない。
―吉本ばなな』

帯まで痺れます。


じんわりと不幸で、そこはかとなく幸せ。

疲れているときに手に取りたい、人生のままならなさをあたたかい愛で包み込んでくれるような一冊でした。


紋佳🐻

読書