『青い壺』


読めばハマる有吉佐和子。
幻の名作長篇。

無名の陶芸家が生んだ青磁の壺が売られ贈られ盗まれ、十余年後に作者と再会した時—。

人生の数奇な断面を描き出す名作、復刊!


『女二人のニューギニア』で、随筆から入った有吉佐和子さん。

ご本人の御人柄も、文章もとても素敵!すき!

ということで、いま大変話題作のこちら拝読しました。


ひとりの陶芸家が焼き上げた、ひとつのうつくしい青い壺をめぐる十三の連作短編集。

老若男女、多様な登場人物たちの心の機微を丁寧に描かれた作品で、すっかり魅了されました。

特に60代、70代を描いた部分が素晴らしい。

『「聞くに耐えない。私、文部省に投書しようかしら」
弓香ばかりでなく、ほぼ全員が案内係の態度に気を悪くしていた。
五十年前に日本で最高の女子教育を受けたインテリ老婆たちは、案内人の心配りにすっかり澱してしまったのだった。
そこで、この親切な男は、すっかり存在を無視されてしまった。彼の謂うお婆ちゃんたちは銘々勝手に歩きまわって個人見学を始めたからだ。
「お婆ちゃん、お婆ちゃん、そっちは立入り禁止です。そちらのお婆ちゃん、こちらへ戻って下さい。
ここはグループで見学してもらうところですから。よろしいか、お婆ちゃん、こちらです。こちら。
そっちと違います。こちらへ来て下さい」
案内人は、どうやらかなり老耄の進んだ一群を引受けてしまったと勘違いしたらしかった。
三々五々と散らばる連中を、大声で呼びたて一カ所に搔き集めようとして大童になった。』

このディテールよ。

シルバー世代のプライド、健康状態、その人生で培ってきたであろう対人配慮力。

読んでいて驚かされ続けました。


初出は「文藝春秋」で昭和51年~52年2月号までの連載。
単行本は昭和52年4月に刊行。
文庫本は昭和55年4月刊行。

この作品が、「いま」話題となって再び注目を浴びているのだそう。

きっかけは、原田ひ香さんによる帯文。

新装版だけで62万部が発行されているそうです。

帯の力、原田さんの力、テレビ特集の力、そして何より有吉佐和子さんという作家さんの持つ力。


良い。とても良い。

こういった作品がどんどん、再ブームとなって自分の元にも届いてほしい。

そう願わずにいられないほど、出会えた奇跡に感謝する読書体験でございました。


紋佳🐻

読書