『いとしい服』


わすれられない服、憧れの服、今日の服、明日の服ー
どんなときも、自分がうれしいもの、かわいいものが心を守ってくれる。

「子どもの時から、わたしのそばでうたったり守ったりしてくれていた、いとしい服のことを書いてみました」

服が好きなあなたへ。

しみじみとあたたかくなる、絵と文で綴るエッセイ集。


「サーキュラースカートっていうんやで」
「かわいいやろ、ミモレ丈やで」

お裁縫が得意なおーなりさんのお母さま。

知識も豊富で、リクエストに応えてさまざまなお洋服を作ってくれる、そんな素敵なお母さまでした。

お手製の洋服には、愛情と思い出がたっぷり。

各エッセイに添えられた1ページのイラストには、思い出のお洋服を身にまとった当時のおーなりさんが描かれていて、愛おしさがこみ上げてきます。


これまで絵本や詩集のイメージが強かったおーなりさんですが、エッセイもまた素晴らしかったです。

懐かしさとはかなさ、愛と軽やかさ。

読むほどに、あたたかいエネルギーがじんわり染み込んでくるような一冊でした。


『心配事で頭がいっぱいで、着るものなんてあとまわし、忙しすぎて、からだやこころが弱っている時に、着なれている大好きな服が、すぐそばで助けてくれた。
ふわ、と袖を通すと、肌から伝わるものが、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と、なんでもない顔をして言う。あかるく包みこんでくれる頼もしさには、泣けてくる。
服はこころにも、からだにも作用する。
日々の1おいしくて、からだにやさしい食事みたい。』

ここも好きでした。

『服はいちにち、いちにち。
着ることは、わたしが生きているあいだじゅう続いていく。
自分のことは知っているようで、ちっともわからない。
生きていると、わたしの知らないわたしに出会い続けて、好きな服も変わっていく。
ふだんの食事を、さっともりつけるように、いつもの服を、さっと着る幸せ。
特別な料理を、あれこれ考えるように、よそいきの服を一花束みたいに着る幸せ。
そんな日常を行ったり来たり、くりかえしながら、毎日は服と一緒に続いていく。
服は、日々の中で一番大切なものではないかもしれないけれど、かけがえのない喜びのひとつです。』

お化粧もそうですが、服が自分に与えてくれる自信や心地よさってありますね。

その日の気分や行く場所に合わせて、自分を飾るだけでなく、それ以上のエネルギーをくれる—

そんな「服の魔法」。


服の触り心地や形、色を楽しみながら丁寧に選んで生きている、おーなりさんの感性に触れられる時間は、まさに癒しのひととき。

人間でいることの尊さのようなものまで、感じさせてくれる一冊でした。


紋佳🐻