『日本文化寄り道の旅』
女性皇族として史上初となる博士号を取得、大学で特別教授や特別招聘教授を兼任され、ベストセラーとなった『赤と青のガウン オックスフォード留学記』をはじめ、多くの著書を執筆されている彬子女王殿下。
本書には、多くの大学などで講義されたものをまとめた7つの「特別講義」が収録されています。
大英博物館の「日本」コレクション、海をわたった法隆寺金堂壁画、美術の裏側にあるもの、神道と日本文化など、リアルな経験談を交えた内容は、まるで目の前で講義を受けているかのような臨場感をもたらしてくれる一冊です。

「はっしーが好きな文章だと思うよ」と友人から勧められ、『赤と青のガウン』を借りて以来、今年は彬子女王殿下のご著書を読み漁っています。
どの作品も、言葉選びがとても美しく、品格に満ちていて。
今回もうっとりしながら拝読しました。
『私は幸いにも、日本文化がかなり身近にある環境で育ちました。(略)
お正月には、百人一首をすることが妙に流行っていた時期もあり、誰が「三笠の山にいでし月かも」を取るかで、壮絶な三笠宮一族による攻防戦が繰り広げられたものでした。』
三笠宮一族による「三笠の山にいでし月かも」の取り合い・・・!
胸熱エピソードすぎます。
『赤と青のガウン』にも登場した法隆寺壁画の複製のお話。
大英博物館で埃まみれの状態で発見し、展示まで漕ぎ着けた話はそちらで読めるのですが、本書ではその複製模写がどのようにして作られたのかという史実が、彬子女王殿下によって細やかに紐解かれていました。
法隆寺金堂が火災にあい一度消失した後も、コロタイプの写真を頼りに完成させたという涙ぐましいエピソードには、胸を打たれました。
「所詮複製でしょう?」と思っていた私を殴りたい気持ちでいっぱいです。
「西洋から見た日本美術の価値」という点で研究をされている彬子女王殿下。
その視座から進められた研究の成果は、日本にいるだけでは知りえない、日本美術の歴史や価値を改めて感じさせてくださるものでした。
明治時代、天皇家のみなさまの正装が洋装へと移り変わっていった背景についても、特に興味深く拝読しました。
時代の大きな転換の中で、装いひとつにも意味や意志が込められていることに、改めて気づかされます。
『ヨーロッパ宮廷のことを学ぶために招聘したアドバイザーであるモールが、ヨーロッパ宮廷では古来の衣装を用いる向きがあると述べているにもかかわらず、伊藤博文が拒否するというのはいかなることなのでしょうか。(略)
伊藤候は笑っていわく「ベルツさん、あんたは高等政治の要求するところを何もご存じないのだ。もちろん、あんたのいったことはすべて正しいかも知れない。だが、わが国の婦人連が日本服で姿を見せると、『人間扱い』にはされないで、まるでおもちゃか飾り人形のように見られるんでね」と。』
1871年に明治天皇が「服制更改の勅諭」を下して様相を奨励した裏で、そのようなドラマがあったなんて。
『日本が西欧列強に追いつくために、西洋の文化を取り入れることが何より重要だと考えていた伊藤ら日本人と、日本人が自国の文化をあまりに軽視することを危ぶんだベルツやモールらの外国人。』
日本人の方が寧ろ、日本の文化や歴史を躊躇なく手放してしまえるというのが、おもしろい。
文章に癒されながら、知的好奇心も満たされていく─
そんな贅沢な読書時間を過ごすことができました。
今後のご出版も、心よりお待ちしております。
紋佳🐻










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