『エベレストは居酒屋です』
”「本当の自分」を取り戻せる場所はどこですか?”
日本人女性初“8000m峰全14座登頂”を果たした現役看護師で登山家の渡邊直子。
ヒマラヤで出会うさまざまな国籍の人との出会いと別れのなかで、驚くようなハプニングに見舞われながらも、「私にとっては、日曜日に居酒屋へ行くようなもの」と語る。
学校でも職場でも家庭でもない、自分らしくいられる「第三の居場所」を作るための人生の秘訣を公開。

タイトルから想像していたような「エベレストでの食事模様」はごく一部で(というかほぼなし)、渡邊さんの半生と、登山エピソードが中心の随筆本でした。
シェルパ族という民族が、登山中のガイド役として活躍しているという話は初耳で。
そのシェルパたちにも、それぞれの個性や才能によって仕事のクオリティにばらつきがある。
お金をかければ経験豊富なシェルパがつき、指名せずに適当にあてがわれたシェルパでは苦労するといった話も、登山回数の多い渡邊さんならではのエピソードでした。
『小学生の頃、テレビの料理番組を観て、そこで宣伝していた料理雑誌が欲しくなった私は、なんと勝手に電話して、定期購読を申し込んでしまいました。普通の親なら「勝手にこんなの頼んで!」と即解約でしょう。
でも母は「料理に興味が出てきたみたいだから、まあしばらく続けさせよう」と思ったそうで、何も言わず、その後けっこう長いあいだ家に雑誌が届いていました。
定期的なお小遣いはありませんでしたが、文房具や本、塾など、勉強になることにはお金を惜しまない母でした。』
「やってみたい」の芽を摘まない。
お母さまの大らかさが、渡邊さんをつくられたのだろうなと思わされるエピソードにも感動しました。
ほか、こんな子ども時代のエピソードも。
『八ヶ岳登山にも最年少で参加した私は、低学年班だったため、八ヶ岳でいちばん高い赤岳には登らせてもらえず、硫黄岳だけの登頂になりました。
それが悔しくて、一人で硫黄岳を2往復したのを今でも覚えています。
帰り際、大人のスタッフに「なんで低学年だと赤岳に登っちゃダメなの?登りたかった」と思い切って伝えると、下山のときには特別に高学年班のみんなと一緒に下山させてもらえることになりました。
そのときは本当にうれしくて、「疑問に思ったことを素直に言ってみたら、ちゃんと認めてもらえるんだ」と自信がついたのを覚えています。』
『小学校5年生のときには、内モンゴル自治区での草原縦走キャンプに参加しました。
当時、内モンゴル自治区に外国人が入ったのは、世界で初めてだったそうです。
そこでの思い出は大草原の中で迷子になって大捜索されたことです。
お花を摘みながら歩いていたら、いつの間にかはぐれてしまいました。
でも見つかってキャンプ地に着いたとき、誰にも怒られませんでした。
もしあのとき怒られていたら、嫌な体験として記憶していたかもしれません。』
周りの大人が寛大で、幼かった渡邊さんの好奇心ややる気を決してへし折るようなことをしなかったことが大変よくわかりました。
ルールや型にはめこむのではなく、ひとりの人間として対等に自身と向き合ってくれる大人がいるだけで、きっとその子はのびのびと育つことができるのでしょうね。
おつまみもお酒も出てこないけれど、「本来の自分を取り戻せる」「日頃の何もかもを忘れて癒される場所」として『居酒屋』ということばを使われている本著。
自分にとっての『居酒屋』は、きっと「本」なのだと改めて感じながら、読了です。
#エベレストは居酒屋です
#渡邊直子
紋佳🐻









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