『平安貴族サバイバル』


和歌を詠んだり楽器を奏でたり、恋愛に一喜一憂したりと、優雅な毎日を送っているように見える平安時代の貴族たち。

しかし実際は、セルフプロデュースやコミュニケーションのスキルがないと生き残れない過酷な世界で、様々な戦略を駆使してサバイバルを図っていた。

実務能力より見た目とセンスの男社会、教養を武器に女主人をサポートしたエージェント=女房、天皇の縁戚になるという一大プロジェクトにまつわる悲喜こもごも、乱れ飛ぶ愛情と呪詛・・・

そこには、ジェンダーやルッキズム、シスターフッドといった現代にも通ずる問題も。

本書では古典文学だけでなく女性学などにも詳しい著者が、そんな弱肉強食な世界に翻弄されながらも意外とアグレッシブに生きた人たちの軌跡を、史実と文学作品をもとに解説。

歴史や古典文学への理解を深めるとともに、現代にも通じる人の生き様や心の動きを浮かび上がらせる。


『そもそも上流貴族は、昼日中に出かけることはめったにないから日焼けなどはしようもないのだった。
だから日焼けをしているというのは、身分の低さを意味することになる。(略)
上流貴族たるもの、女にしてみたいほど優美で色白でなければ美しくはないのである。
いい男は、だから女性にも匹敵する美しさがある。
すると美の基準は女性性にあるのだということになるだろう。(略)
日本で人気になる男性アイドルや俳優はたいていの場合マッチョではない。どちらかというと中性的で少年のような面影を残した男性が人気になっているのではないだろうか。
そのように考えてみるとき、私たちが千年を超えて、いまだに平安貴族たちほ価値観をよしとしていることに気づかされるのである。』

第6章『妻・母として以外での女性の自己実現はあったか』の章もおもしろい。

『貴族の女性というと、良き縁談を得て、妻になり子を産んで母になるのが通常の人生コースのように思いがちだが、実際には結婚しても子が生まれても女たちは働いていたのである。(略)
天皇家に入内するというのは実際には宮中で働く一員となることだった。』


着眼点は、面白かったけれど。

内容は、想像と・・・ちょっと異なりました。

文献からの引用や紹介が多く、その解説がメイン。

論文を呼んでいるような堅さだったので、もう少し噛み砕かれた、口語的な文章だったら、よりカジュアルに読めた気がします。

・・・と思っていたら、

『おわりに』に書いてありました。

『本書は、いわゆる初学者向けの解説本をあらかた読んでしまった人が次に読む本として企画された。』

ああ・・・その前置きを知っていれば。

私にはちょっとハードルの高い一冊でした。

歴史好きな方はぜひ!


紋佳🐻

読書