『スマホを落としただけなのに』


麻美の彼氏の富田がスマホを落としたことが、すべての始まりだった。

拾い主の男はスマホを返却するが、男の正体は狡猾なハッカー(クラッカー)。
麻美を気に入った男は、麻美の人間関係を監視し始める。

セキュリティを丸裸にされた富田のスマホが、身近なSNSを介して麻美を陥れる狂気へと変わっていく。

いっぽう、神奈川の山中では身元不明の女性の死体が次々と発見され・・・。


ずっと気になっていて、ようやく拝読。
へえ、こういうお話だったのね。

(勝手にイメージしていた内容と異なりました。笑)


SNSを使った犯罪、ストーキングの方法や、

パスワード特定の方法、

ハッカーやクラッカーが使う、IT技術というより、人間の心理を利用した「ソーシャルエンジニアリング」という方法(公式を語ったメールで安心させる等)、

サイバー犯罪の手口、恐ろしさに戦慄しました。


第15回『このミステリーがすごい!』大賞最終選考作品『パスワード』を改題し、加筆修正した本作。

犯人、次のターゲット、刑事という3つの視点から物語が展開していく中、その『このミステリーがすごい!』大賞最終選考で指摘されたのが「捜査側の描写が雑」(大森望)、「警察捜査にリアリティを欠く」(茶木則雄)という刑事パート部分。

私はそんなに気にならなかったけど、ミステリだからこそ、そこはきちんと描ききらないといけないのかしら。

最初から完成された作家などはいないし、それを差し引いても素晴しい新人だ、と絶賛している五十嵐貴久さんの解説に、深く頷く私でした。


大賞受賞作品や、ノミネート作品を何冊も読んでいるけれど。

『このミス』ってハイレベルな闘いなんだなぁ・・・と、改めて。


紋佳🐻

読書