『ボランティアバスで行こう!』


『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作家・友井羊のデビュー第二作目!

著者自身もボランティアとして足を運んだ、震災・被災地をテーマ、舞台にしたミステリー。


東北で大地震が発生、日本各地からは自衛隊救助をはじめ募金や物資などの支援や、民間団体がバスをチャーターしてボランティアに参加する“ボランティア・バス"が盛んに行われる。

就職活動のアピールポイント作りのため、ボランティア・バスを主催することにした大学生の和磨。

父が行方不明になった姉弟と知り合いになった女子高校生の紗月。

あることから逃亡するため、無理やり乗り込んだ陣内など、さまざまな人がバスに乗り合わせる。


それぞれの目的は果たせるのか。

被災地で出会う謎と事件が、バスに奇蹟を起こす。


『スープ屋しずくの謎解きごはん』でお馴染み、友井羊さんの作品。


地震、津波によって被災した土地へ向かうボランティアバスが舞台なのですが、

空き地に簡易的に作られた「仮の墓地」、

「ハラヘッタ」、「SOS」とペンキで書かれた屋根、

「津波が来たぞ!」と叫ぶ、未就学児くらいの年齢の子どもたちによる『地震ごっこ』、『津波ごっこ』と呼ばれる恐怖を消化しようという行為など・・・

被災地の様子がビビッドに描かれていて、ショッキングですらありました。


原則としてボランティアは、被災地の方からの厚意は受け取らず、「自己完結する」(飲み物、食べ物、ガソリンなどば自分たちで用意していく)ことがマナーだけれど、その土地の人が「ぜひ」と渡してくるものについては、その気持ちを尊重し、受け取ることも例外としてある。

どんな場合でも、ボランティアと被災者は『対等であるべき』。

・・・こういうの、難しいですよね。


ASD、PTSDについての症例も綴られていたりして、「災害」によって起こる、さまざまな影響について知ることができました。


しかし重たいテーマを扱いつつも、読了感は爽やか。

友井さんらしい、希望ある後味でした。


そして・・・

ヒントはたくさん散らばめられているのですが、まんまと時系列トリックにハマりました。

読み返し必至の物語です。


紋佳🐻

読書