『神様』
くまにさそわれて散歩に出る。
川原に行くのである―
四季おりおりに現れる、不思議な“生き物”たちとのふれあいと別れ。
心がぽかぽかとあたたまり、なぜだか少し泣けてくる、うららでせつない九つの物語。
デビュー作「神様」収録。
ドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞受賞。
河童がでてきたり、壺の精が出てきたり、
死んだ叔父さんが出てきたり、
人間を狂わせる人魚が出てきたり・・・
なかなか小説では扱いにくそうな「不思議な存在」たちも、川上さんの手にかかれば奥深く幻想的な物語たちへと仕上がってしまいます。
『カナエさんがごく若いころのことである。
どのくらい若いかというと、自分がどんなに若いかも気がつかないくらいの、若さである。』
『影は若い男のものだった。
どのくらい若いかというと、自分がもう若くないと思いこむ、そのくらいの若さである。』
こういう表現がとても素敵。
同じページの、隣り合わせに並んだ同じ言葉でも、話者によって平仮名になったり、漢字になったり。
また地の文であえてひらがなを多用することで、絵本のような、昔ばなしのような趣きがあったり。
そういう『活字へのこだわり』のある川上さんが、とても好きです。
表題作『神様』は、川上さんの記念すべき小説第一号だそう。
人間よりも人間らしい熊との、切なくもあたたかいお話に、静かに感動しました。
紋佳🐻
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません