『シフォン・リボン・シフォン』


いい本でした。

寂れつつある、とある地方都市に移転してきた輸入下着屋さんが舞台のお話。

各章が、異なる登場人物の目線で描かれているのですが、それぞれが「親の介護」や「難病」によって悩み、苦しみながら、どうしようもない孤独と闘っていて。

「高価で美しい下着」を着ることで、「自分が大切にされている」ような感覚を手に入れられる・・・など、

高級な下着は、灰色の生活に放り出された人に、希望や彩を添えてくれるアイテムだということがわかりました。


近藤史恵さんの作品はいろいろと拝読しておりますが、今回の作品は、今までで1番、社会問題(高齢化社会、性同一性障害、介護、不景気・・・など)に切り込んでいて、特に心に響きました。

ステレオタイプの頑固オヤジや、娘に否定的な評価しかしない母親など、読んでいて辛い部分もありますが、最終的には少しすっきりさせてくれるので、なんとか読み進められます。


親子といえど、人間同士。

傷つき、傷つけあうこともあるけれど、

恋人のように代わりが見つけられないのが家族。

自分の親が要介護になる日はまだまだ遠いと信じているけど、

そのうちに他人事じゃない時代も来るのだろうと、ある種の覚悟みたいなものが芽生えるきっかけになる1冊でした。



紋佳🐻

読書