『映画を早送りで観る人たち』


現代社会のパンドラの箱を開ける!

なぜ映画や映像を早送り再生しながら観る人がいるのか―。
なんのために。
それで作品を味わったといえるのか。

著者の大きな違和感と疑問から始まった取材は、やがてそうせざるを得ない切実さがこの社会を覆っているという事実に突き当たる。

一体何がそうした視聴スタイルを生んだのか。
いま映像や出版コンテンツはどのように受容されているのか。

あまりに巨大すぎる消費社会の実態をあぶり出す意欲作。


ほんの十数年前までは、1枚に2話入ったDVDが、1泊2日300円前後だったのが、定額制動画配信サービスの登場によって、『映像作品の供給過多』になっている、ということから語られています。

映像作品を倍速で鑑賞する視聴者は、もはやそれらを「映像作品」とは呼ばず「コンテンツ」と呼ぶ。
すると、「映像作品を鑑賞する」というより、「コンテンツを消費する」と言ったほうが据わりがいい。


『映画やドラマの倍速視聴には抵抗があっても、ニュースや情報番組の録画を倍速視聴することには抵抗がない、という人は少なくない。
なぜ抵抗がないのかといえば、前者が「芸術鑑賞」、後者が「情報収集」だと分けて考えているからだ。』

つまり、倍速視聴する人は、「流行っているから」だとか、「なぜ人気があるのか知りたい」といった興味から、「情報収集」のために、見ているのだと。


またその傾向を強めている原因が、「サブスク」。

映画館やレンタルDVDなど、作品1本あたりに支払いが発生している場合と異なり、「何本見ても月額は同じ」、「むしろ見れば見るほど1本あたりの支払額は安くなる」という仕組みが、作品を大切に扱わなかったとしても、罪悪感を抱かせにくくしており、

また一発勝負の映画館や、返却後のレンタルDVDと違って「何度でも見られる」というサブスクならではの「余裕」のようなものも要因の一つ。

あるいは、短尺動画を広めたTikTokや、「間」を排除した編集をされたYouTubeに慣れてしまった人たちが、映像作品の「間」に耐えられない、といった影響があるという点も、よくわかります。

また、『スマホとタブレットの「ひとり観」が倍速視聴を助長した』という話にも、なるほど〜と納得!


昨今のラノベのタイトルの長さについて言及していたり、
イントロからいきなりサビが流れ出す歌謡曲について触れていたり、

あらゆる娯楽・芸術に興味のある人に読んでほしいベストセラーでした。


紋佳🐻

読書