『蕎麦湯が来ない』
美しく、儚く、切なく、哀しく、馬鹿馬鹿しく、愛おしい。
鬼才と奇才。
文学界の異才コンビが詠む、センチメンタル過剰で自意識異常な自由律俳句集。
『カキフライが無いなら来なかった』、『まさかジープで来るとは』に続くシリーズ第三弾。
四〇四句の自由律俳句と五〇篇の散文を収録。
幻冬舎から『カキフライが無いなら来なかった』が出たのが2009年。
『まさかジープで来るとは』が、同じく幻冬舎から2014年に出ていて、
こちらは2020年にマガジンハウスから出版された第3弾。
どうして『まさかジープで来るとは』を飛ばして読んでしまったんだろう・・・順番、ちょっと前後してしまいました。
もちろん、その馬鹿馬鹿しさ、愛おしさ、切なさは健在なのですが、『カキフライが無いなら来なかった』のテイストと、ちょっと違うなあと感じたりして。
でも、そりゃあそうですよね。
11年も経てば、人間、立場も価値観も変わりますよね。
ただ『カキフライ~』の方が、世間への尖り方が突き抜けていて、良かったな〜と個人的には。
けれど、こういうところ・・・
『お通しが気に入らないなら残せば良いじゃないかという人がいるだろう。しかし、お店側が仮に本気で作ったものだったとしたら?
三年間修行した青年がついに「明日からお通しだけやってみるか?」と大将に言われ徹夜で作ったお通しだったとしたら?
厨房から誰かがこっちを覗いていないか。
客が帰ったあと残された小鉢を見つめて途方に暮れる青年がいるかもしれない。
そんなことを一度考えてしまうと、テーブルの端で残されたままのお通しがずっとこちらを見ているような気がしてくる。』
こういう、又吉さんの繊細さ、突っ走った妄想の世界は相変わらずで。
うん、とても好き。
『一貫だった』
『8からあがれない秒針』
『炬燵の中にも無かった』
『歯医者で二巻まで読んだ』
『断末魔の叫び並みのいらっしゃいませ』
自由律俳句は、本当にたのしい。
せきしろさんのパートでは、亡きお父様とのエピソードや、又吉さんとの出会いのきっかけとなった亡き後輩くんのエピソードなど、ぐっとくる文章もあって。
第1弾とは違った、大人の深みのようなものを感じさせる内容でした。
さて、第2弾を読まなくては。
紋佳🐻
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