『夜果つるところ』


遊廓「墜月荘」で暮らす「私」には、三人の母がいる。

日がな鳥籠を眺める産みの母・和江。

身の回りのことを教えてくれる育ての母・莢子。

無表情で帳場に立つ名義上の母・文子。

ある時、「私」は館に出入りする男たちの宴会に迷い込む。

着流しの笹野、背広を着た子爵、軍服の久我原。なぜか彼らに近しさを感じる「私」。

だがそれは、夥しい血が流れる惨劇の始まりで・・・。

謎多き作家「飯合梓」によって執筆された、幻の一冊。

『鈍色幻視行』の登場人物たちの心を捉えて離さない、美しくも惨烈な幻想譚。


『鈍色幻視行』は、15年の連載期間を経たミステリ・ロマン大作。

そして『夜果つるところ』は、『鈍色幻視行』に登場する作家・飯合梓が遺した“呪われた小説”という位置づけである作中作の単行本化。

「本格的にメタフィクションをやってみたい」という著者渾身の挑戦作・・・!

という事実を、読了後に知りました。

あらら、じゃあ『純色幻視行』も読まなくちゃ。


『犬は数日続けて来る時もあったし、しばらく姿を現さない時もあった。
どちらかといえば姿が見えないほうが気持が落ち着いたけれどしばらく見えないとそれはそれで心配なので、癪に障りつつも気にかかる存在だった。
そう。犬だ。違う。犬を見ている。
犬の話をしたいのではない。いや、やはり犬の話なのだろうか。
ああ、また堂々巡りだ。』

この恩田さん節に、どんどん呑み込まれていって、抜け出せなくなる感じが堪りません。

恍惚。


紋佳🐻

読書