『1984年』


“ビッグ・ブラザー"率いる党が支配する全体主義的近未来。
ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。
彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。

ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが・・・。

二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場!


2022年1冊目!(年末から読んでいたけど)

「名作も名作だけれど、きっとお借りしなければ手に取っていないであろうシリーズ」のうちの一冊。
今回も、貸してくださったクラリネット吹きのお姉さまに感謝を。


『店の主人はちょうど石油ランプに火を灯したところで、清潔ではないが人をほっとさせる匂いが漂っていた。』

においまでもが沸き立つような、情景描写が印象的でした。
細やかで、生々しくて、映像を見ているかのような鮮明さ。


過去を捏造したことを忘れる、ということを忘れる―〈二重思考〉を強制された世界。

『ナンセンスだな。地球はわれわれと同い年だ。われわれより前から存在していたわけではない。そんなことはあり得ないだろう。人間の意識を通じなければ、何も存在しないのだからね』

第三部では、読み手のこちらまで、主人公とともに拷問にかけられ、頭の中、精神が混乱と苦痛の渦に支配された心地になりました。
(あれだけ混沌とした思考・精神状態を、けれどとても読みやすく執筆してしまうオーウェルさん、凄すぎます。)


『ニュースピーク』と呼ばれる架空の言語(英語を大きく単純化したもの)を強制することで、国民の語彙や思考を制限する・・・

という政策も、言語学に興味のある自分にとってとても興味深い設定でした。
思考・表現のためには言語が必要である、と。

大学の授業で、「レポートか小説を提出しなさい」という課題が出て、『言語の存在しない世界(音の信号とハンドサインのみの世界)』を描いた小説を提出してSをもらったことがあったけれど、その設定の甘さを痛感させられたのでした。


本編の後に付いている『ニュースピークの諸原理』と題された作者不詳の解説文。

これが過去形で記されていることが、主人公ウィンストン・スミスの時代より遠い未来においてこの支配体制が破られることを暗示している・・・だなんて・・・立った鳥肌がなかなか治まる気配がありません(素晴らしすぎる)


紋佳🐻

読書