『命の意味 命のしるし』


多文化社会の中で、はざまに立たされた人々の「それでも自分はこう生きてみたい」という選択を、願いをこめて書きつづけてきた作家・上橋菜穂子。

「野のものは、野に帰してやりたい」と野生動物たちの声なき声に耳をすませて、共生の道を探しつづけてきた獣医師・齊藤慶輔。

人と人、人と自然との関係を見つめてきたふたりが問う、命の意味とは―。


『ちなみに、私の卒論のテーマは「産の忌(いみ)」でした。
世界じゅう、さまざまなところで、お産を「血の穢れ(けがれ)」とする考え方があって、命を生みだすたいせつなものなのに、なぜだろうと不思議に思っていたのです。』

上橋さんの卒論、読みたい!


『だから私が描く物語の主人公は、みな、迷う人です。
バルサも、チャグムも、迷いながら歩き続ける。
バルサは、まさに私です。(中略)
子どものころ、体が弱かった私は、あんなふうに強くなりたかった。
彼女の強さは、でも短槍の達人というだけではない。
つらいこと、悲しいことをくぐりぬけてきた経験が、彼女を強くしている。
幼くして天涯孤独の身になったバルサ自身が、誰かに守られ、助けられてきたからこそ、チャグムに出会ったとき、今度は守る側の人になれたのだと思います。』

数々の代表作の、登場人物たち、執筆の裏側を伺うこともでき、上橋さんファンの方は一読の価値ありです!


『野にあるものは、野に。』と仰る、釧路湿原野生生物保護センターで野生の猛禽類の獣医をされている齊藤慶輔さんは、『獣の奏者』で監修を担当されたのをきっかけに、上橋さんとご縁の繋がった方。

『なぜ治すのか』といった哲学的な問いの答えも、とても説得力があり、上橋さんが「作品を執筆する上で多大な影響を受けた」のも頷けました。


目指すべくは、「共存」ではなく「共生」。

読んでよかったと、心から思える一冊でした。


鷹を見つめる齊藤さんと、

大空に思いを馳せる上橋さん・・・

表紙がもう物語!素敵すぎます。


紋佳🐻

読書