『書店ガール』


吉祥寺にある書店のアラフォー副店長理子は、はねっかえりの部下亜紀の扱いに手を焼いていた。

協調性がなく、恋愛も自由奔放。

仕事でも好き勝手な提案ばかり。

一方の亜紀も、ダメ出しばかりする「頭の固い上司」の理子に猛反発。

そんなある日、店にとんでもない危機が・・・。

書店を舞台とした人間ドラマを軽妙に描くお仕事エンタテインメント。

本好き、書店好き必読!


爽やかなタイトルから勝手に想像していた内容(お仕事爽快ドラマ!かと思っていた)と違って、

職場の人間関係の縺れや、結婚後の夫婦の価値観のすれ違いなど、冒頭から陰鬱な内容が続き驚きました(嫌いじゃないです)。


先日拝読した、同作者・碧野圭さんの『書店員と二つの罪』でも、書店員さんの舞台裏を色々と知ることができて楽しかったのですが、こちらも舞台が書店ということで、さまざまな事情が描かれていました。

サイン会を催すことによる、版元と書店のそれぞれの利点を説明したところでは、デメリットについても触れていて。

「サイン会をやるためには宣伝もしなきゃいけないし、当日は社員もアルバイトも増やさなければならない。
作家さんには謝礼とは言わないまでもおみやげを渡したりするわけだし、それに見合う利益が上げられなければやる意味はない。
コミックの価格が仮に五百六十円だとすると、店の利益は二割だから百十二円。
それが百冊売れたところで一万二千円にしかならないの。
コストパフォーマンスが悪すぎると思わない?」

サイン会をしたところで、書店にとってどれほどの利益になるのか。

集まったファンは、果たしてその後も、その書店のリピーターになり得るのか。

ひと言でサイン会と言っても、さまざまなバランスをとって、企画されているのだなぁと改めて考えました。


ぎくしゃくした二人の女性書店員それぞれの目線で物語が進むのですが、

一方の言い分・ものの見方・解釈が、もう一方には伝わっていなかったり、誤解を生んでいたり、すれ違いの多さにモヤモヤ・・・(重ね重ね、嫌いじゃないです)。

同じ『書店員』という仕事でも、考え方やポリシー、立場によって、棚の演出や接客の選択肢には幅がある、ということが学べる物語でした。


実際に存在する本が、さまざまな場所でさらりと登場するので、興味のあるものはメモをとったり、

舞台が吉祥寺で、勝手知ったる居酒屋やカフェが出てきて、懐かしいきもちになったりしました。


紋佳🐻

読書