『人間標本』


人間も一番美しい時に標本にできればいいのにな

蝶が恋しい。
蝶のことだけを考えながら生きていきたい。
蝶の目に映る世界を欲した私は、ある日天啓を受ける。
あの美しい少年たちは蝶なのだ。
その輝きは標本になっても色あせることはない。
五体目の標本が完成した時には大きな達成感を得たが、再び飢餓感が膨れ上がる。
今こそ最高傑作を完成させるべきだ。
果たしてそれは誰の標本か。
―幼い時からその成長を目に焼き付けてきた息子の姿もまた、蝶として私の目に映ったのだった。

イヤミスの女王、さらなる覚醒。

15周年記念書下ろし作品。


きた、問題作ーーー!(褒めています)

タイトルからしてワクワクするではありませんか。
そのまんまの内容過ぎて、よくぞこのタイトルをつけましたね、と感動する程です。


蝶の研究の第一人者である主人公が、いかにして人間標本をつくるに至ったのか、その思考の過程を追いかけているうちに、こちらの精神まで参ってきます。楽しい。

犯罪者の心理描写を面白いと思える人にはお薦め。


『蝶のように美しい少年たちを標本にしたい。そのような連続殺人犯は、「異常」ではあっても「特異」ではないはずだ。憧れや美の追求の果てに、その時代ごとの倫理観を逸脱してしまった犯罪者はめずらしい存在ではない。』

その殺人は芸術のためであって、犯罪では無い―


後悔、怒り、嘆き、幸福・・・

何とも言えない後味に、そうそうこういうのが良いのよ、と。

湊さん好きさんには刺さるであろう名作。


紋佳🐻

読書