『燕は戻ってこない』
北海道での介護職を辞し、憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳女性・リキ。
「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニック「プランテ」の日本支部に赴くと、国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられ・・・。
『OUT』から25年、女性たちの困窮と憤怒を捉えつづける作家による、予言的ディストピア。
田舎から憧れの東京へ出てきたものの、働けど働けど暮らしが豊かにならず、10円、20円の出費に神経を使う毎日。
そんな貧しさを抱えた主人公のような若者が、きっとたくさんいるんだろうなあとヒリヒリしました。
容姿や学歴などからランク付けされ、値段が付けられる卵子や精子。
アメリカの大手企業では、後からでもほしい時に子どもを授かれるように、20代のうちに元気な卵子や精子を凍結しておくための助成金が出る―
などなど。
お金を払ってでも子どもがほしい富裕層と、
お金をもらえるなら子宮を売る貧困層。
生殖医療が発展することで生じてくる、倫理や、貧富の格差の問題について、考えさせられる物語でした。
紋佳🐻
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