『「星の王子さま」の謎』
王子さまがヒツジを一匹欲しかったのはなぜか。
バオバブの木はそんなに怖いのか。
王子さまは星を出るときなぜ渡り鳥を使ったのか。
生と死を司る番人ヘビの謎とは。
幻の井戸の水はなぜ心によいのか。
聖書に及ぶ流布、一級の文学作品と評する海外の数多くの『星の王子さま』研究評論を基に、論創社版完全新訳『星の王子さま』の謎を解く。
『星の王子さま』の新訳を手がけられた訳者のひとり、三野博司さん。
序章から最終章まで、『星の王子さま』全二十九章を、頭から順番に解説しています。
とにかく、参考文献の数がすごい。
サン=テグジュペリによる著書、9冊。
『星の王子さま』関連、54冊。
(寺山修司さんの『便所の中の星の王子さま』が気になる!)
その他児童書等、16冊。
いや、「卒論か!」と突っ込みたくなる参考文献の量でした。
『王子さまの死に、作者サン=テグジュペリの二歳下のおとうとフランソワの死を重ね合わせて見る人は多い。』
十五歳でこの世を去ることになった弟フランソワの言葉。
『死ぬ前に、兄さんと話がしたかったんだ。ぼくはもう死ぬんだから。(・・・)
こわがることはないんだ・・・ぼくは苦しくなんかない。痛くもない』
王子さまの言葉と響き合うのがよく分かります。
合理主義の伝統を持つフランスでは、ジャンルとしてのファンタジーに属する作品が少ないのだそう。
でもたしかに、『星の王子さま』は、単なる児童書でも、ファンタジーでもない。
そんなサン=テグジュペリの土壌が育てた、奇跡のような物語なのだなと、改めて実感しました。
紋佳🐻
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