『患者が知らない開業医の本音』


まさかの脳動脈瘤判明、大学病院で働けなくなった著者に残された道は「開業医」だった。

貯金少なめ、経営知識ゼロでどうする?

飛び込むとそこは開業医だけが知る医療のワンダーランド。

患者の取り合い、突如やってくる緊急事態、クレーマーとの直接対決、年会費42万円もする医師会加入。

「よう、儲かってる?」なんて聞かないで―

医師の実力とは、と問い続けながら日々奮闘する舞台裏を、ユーモアを交えて明かす。


子どもが小児科を受診した際の診断までの流れ、珍事件、開業医あるある・・・面白かった!


『風邪とは何かとか、風邪薬の意味は何かとか、早めに薬を飲んで何がいいのかとか、そんなことについて時間をかけて説明していくと、結局普通の風邪の子の診察よりも3倍くらい時間がかかる。(略)
でもぼくは敢えて言いたい。
処方する薬が少ないほど、説明が長いほど、それはいい医者であると。』

そうですよね。

待ち時間が少なくて、すぐに薬を出してくださるかかりつけの病院があるのですが、少し考えを改めようと思いました。


『ぼくはふだん風邪の子に対して感冒薬を4~5日しか処方しない。
なぜなら子どもは変化が速いからだ。
風邪は万病のもととはよく言ったもので、初めはみんなただの風邪なのである。
そして風邪は肺炎にも変化しうるし、こうして膿胸にもなる。
くり返し患者を診るのは小児医療の基本のキであるが、ぼくが長期処方をしないことに不満を述べる親もときどきいる。』

風邪が重症化したお子さまのエピソードは、どれも読んでいて苦しいものばかりでした。

幸運にもまだ、重い病気にはかかっていない我が子たちですが、それを過信せず、些細な風邪症状も注意深く観察してあげようと、肝に銘じました。

子どもは治癒力があるから直ぐに治るだとか、身体が柔らかいから大丈夫だとか、病は気からだ!とか、そんなの、全くの無責任論でした(今更だけど、今更だとしても知ることが出来て良かった)。


先日、子どもを小児科に連れていったところ、お薬手帳を見た先生に驚かれました。

まさにこの本に、同じケースが書かれていて。

『さらに驚いたことは、耳鼻科の先生の薬の処方のしかたである。
風邪に対してほぼ全例、抗生剤を処方していることを、ぼくはお薬手帳を見て知ることになった。』

「子どもの風邪は、小児科に連れていくべきか、耳鼻科に連れていくべきか」

その答えは、

『まず、病気の診断・治療の入り口として小児科を受診してみてはどうだろうか』

我が家にとって、まさに知りたかった内容でした。


『モンスターペイシェント』っていう言葉も初めて知りました。

医者同士、業界内での摩擦もあるし、患者さんにも心を砕いて・・・お医者さんって大変だなと改めて。

それから、コロナで店仕舞いをした飲食店があることは当然知っていたけれど、コロナ禍で畳まざるをえなくなった小児科病院があるとは知りませんでした。

知らなかったことをたくさん知ることが出来て、良い読書時間なりました。


愛情深く、それでいて飾らない、ユーモアを混じえながら素直に綴られた文章に、松永さんのお人柄、誠実さが伝わってくる一冊でした。


紋佳🐻

読書