『こう見えて元タカラジェンヌです』


清く正しく・・・おもしろく!?

100年以上の歴史を持ち「清く、正しく、美しく」をモットーに女性たちが歌い踊る宝塚歌劇団。

その美しさでファンを魅了するスターの隣には、角刈りの車引き・モヒカンのチンピラ・麻薬密売人などクセの強いおじさん役で唯一無二の存在感を発揮した名コメディエンヌ「たそ」の姿があった・・・!

一次敗退の翌年のタカラヅカ合格、先輩スターに囲まれ興奮の入団と次々にのしかかる試練、奇跡のSMAP×SMAP出演で「タンバリン芸人」になったエピソードなど、音楽学校入学から宝塚歌劇団卒業まで15年の月日をコミカルに描く。

「宝塚に新ジャンルを築いた」と言われた伝説の元タカラジェンヌによる、誰も知らない爆笑宝塚エッセイ。


『しかし、入団2年目ですでにおじさん街道まっしぐらだった私は、いかに「老けるか」を考えながら毎日を過ごし、卒業するまでにありとあらゆるタイプの「髭」をつけ、よりリアルな「シワ・シミ」の再現など、様々な「逆アンチエイジング」方法を見出したのだ・・・』

バラエティ番組などでも、度々その「おじさん街道を突き進んだ姿」、「タカラジェンヌらしからぬエピソード」の数々が取り上げられ、宝塚の世界に疎い私ですら大好きな、天真みちるさん。

二枚目しか出てこない芝居なんてつまらない。

こういう俳優さんがいるから、舞台上の世界に奥行きができる。

「脇役のトップスター」を目指し奮闘するタカラジェンヌの物語・・・エッセイとしてこんなに目を引く題材、なかなかありません。


それにしても、最初から最後まで、まあ、出るわ出るわ、「アニメ・漫画作品」喩え。

『それも「ポニーテールとシュシュ(AKB48)」のようなかわいいものではなく、「テニプリ(テニスの王子様)の越前南次郎」のような、武士のような印象を与えるものだった。』

『その間にも眠気は『ガンバの大冒険』の「ノロイ」のように絶望的に立ちはだかる。』

『ものすごく虚しい気持ちになった。
漫画版ナウシカでいうところの「虚無」になった。(略)
今度はエヴァのシンジ君のように、「目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ・・・」と、ただひたすらピアノを弾き続けた。』

『その日から『ドラゴンボール』の孫悟空のごとく、地球上の元気を集めて発するパフォーマンスは千秋楽まで続いた。』

好きなものに対して真っ直ぐ!な、天真さんのお人柄が伝わってきます。


稽古の様子が伝わってくるパートがとてもすきでした。

トップスターの方々が、惜しげも無く、後輩にアドバイスをしたり、稽古をつけてあげたりという土壌、素晴らしいですね。

宝塚歌劇団が100年続いてきたのは、そうやって上から下へと、たいせつなバトンが受け継がれてきた結果なのだと知りました。


「真飛聖さん演じるトマスを不法侵入で止めようと思ったら力負けして引きずられたっぽく出てくる兵隊」の役のとき。

マイクを申請することを知らなかった(新人はマイク無しだと思っていた)天真さんに対し、その一言のセリフ(舞台袖で言う影ゼリフ)を、『これに向かって言いな』と、自身のピンマイクを差し出すという、真飛さんのイケメンぶりに私がクラクラ。

お客さんに見えていない舞台裏でのフォロー、たまらないです!


『タカラヅカの演出家の先生の演出方法は十人十色、本当に様々だが、短い期間での稽古になるので、集合日に台本を渡され本読みをした後、次の日から立ち稽古に移り、台本は2~3日で外すのが基本だ。』

このスピード感。

そしてただセリフを覚えるだけじゃない。

歌のメロディ・歌詞を覚え、ダンスの振りを覚え・・・

やっぱり凄い。宝塚ってすごい。


受験から退団公演まで、天真さんの宝塚人生が、ぎゅっと詰まった本。

読み終えた時、最高に幸福なきもちでした。

続編も、拝読します!


紋佳🐻

読書