『バラの回想』


「星の王子さま」の作者、サン=テグジュペリの妻コンスエロが、2人の出会いから、結婚、亡命、夫の行方不明にいたるまで、仲たがいを繰り返しながら、結局最後まで別れることがなかった14年の結婚生活をつづった手記。


〈『星の王子さま』はコンスエロの大きな情熱から生まれたと、ついに彼は認める・・・そしてバラは、事実、物語の核心をなす。〉

『星の王子さま』の物語の中で、サン=テグジュペリは、コンスエロをバラとして描くことで、彼女に償っているんですよね。

「僕はまだあんまり小さかったから、愛し方が分からなかったんだ」


サン=テグジュペリの波乱万丈な人生に、コンスエロあり、と言われているので、「どれほど激情的な奥さんなのかしら」と思っていたのですが、蓋を開けてみれば、まあサン=テグジュペリの仕打ちの酷いこと。

何週間も家を空けるのは当たり前、浮気当たり前、貧乏暮らしを強いたかと思えば、本が売れてお金が入れば高い家賃の家を借り、散財してすぐにまた貧乏に。

離婚と言われれば、地の果てまで追いかけ、愛を囁いて取り戻したり、逆ギレして怒鳴り散らしたり・・・

いやそりゃコンスエロも大変だわ!
と同情してしまうほどの気まぐれさです。


浮気をされたり、連絡が取れなくなったり、何度別れを決意しても、戦争によって引き裂かれても、
いつもサン=テグジュペリを待ち続けたコンスエロ。

彼女そのものが「バラ」であったことが、よく分かる一冊でした。

なにより、タイトルが素敵。


〈僕は『星の王子さま』の続きを書く。物語の終わりに、王子さまはそのハンカチを王女さまにあげるんだ。
君はもう棘のあるバラじゃなくなるだろう。
いつまでも王子さまを待っている、夢の王女さまになるんだ。〉

もしも『星の王子さま』に続きがあったのなら、
バラは王女さまになっていたのかもしれない。


紋佳🐻

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