『ミ・ト・ン』


「おもしろかった」とか、

「感動した」とかじゃなくてね、

『読んでよかった』、『この本と出会えてよかった』と思う作品でした。

湖からおいしいお水を汲んできたり、

お庭に植えたりんごの木から果実を収穫したり、

お庭にやってきたコウノトリの夫婦と子どもを、家族として迎えたり・・・


作中のことばで言うと、

『何もないけど、すべてある』

『それだけで、幸せなのです』


この言葉たちの、刺さること、刺さること。



ミトンはただの防寒具ではなくて、

あらゆる慣習になくてはならない存在で、

生まれた瞬間から、亡くなるまで、

誰かが誰かのことを想って編んだ、愛そのもの。


ある日突然国が併合され、夫が連行されても、

やさしい祈りがこめられたミトンが、

ふたりをずっと、ずっと繋ぎ止めて・・・。



『祈る』ことがこんなにも切なくて、温かいことなのかと、一緒にその想いを体験できる物語でした。


新婚さんに読んでほしいです、とても。



紋佳🐻

読書