『裁判官の爆笑お言葉集』


「死刑はやむを得ないが、私としては、君には出来るだけ長く生きてもらいたい」(死刑判決言い渡しの後で)。

裁判官は無味乾燥な判決文を読み上げるだけ、と思っていたら大間違い。

ダジャレあり、ツッコミあり、説教あり。

スピーディーに一件でも多く判決を出すことが評価される世界で、六法全書を脇におき、出世も顧みず語り始める裁判官がいる。

本書は法廷での個性あふれる肉声を集めた本邦初の語録集。

これを読めば裁判員になるのも待ち遠しい。


爆笑?というような内容では無かったのですが(裁判官が法廷でそんなふざけた発言をするはずも無く)、くすっと笑えたり、じわじわツボを押してくるような発言の数々に、判事の方の人間性や苦労が垣間見え、興味深く読ませていただきました。


『いつもの有罪主文なら、出だしは「被告人を」となるわけですが、川口裁判長が声を張り上げて「被告人は」とおっしゃったとき、居合わせた全員がハッとしたように見えました。次の瞬間、無罪が宣告されると、「うおっ」という傍聴席からのどよめきに混じって拍手も起こり、バタバタと法廷の外に飛び出す記者も数人。』

思わず裁判所に行ってみたくなるようなエピソードも。

傍聴席に通うのが趣味という方は、きっと人間を観察するのが好きで、たまに巡り合えるドラマチックな展開に痺れるのでしょうか。


中でも改めて考えさせられたのは、裁判にかけられる被告人や、その内容は、多岐に及ぶということ。

殺人や窃盗といった悪事の、犯行に及んだ「個人」が罰せられるものは理解しやすい。

それが企業等の組織のトップであったり、「代表者」を罰することも当然あるということにはっとしたり・・・


あるいは内容について。

幼い子どもを親戚ぐるみで虐待し殺害してしまったというような酷い内容から、介護のためのお金も頼る人もなく、夫婦で承諾自殺をはかったものの生き残ってしまった夫・・・といった救われない内容まで、内容も様々なのだなと「罪」という言葉に含まれる意味の広さに、思いを巡らせました。


「罰せられるべきは人ではなく、その行いである」というのが身に染みる事案も多いのですね。

悪いのは人間か、社会か、運命か・・・

だから人は、物語を追いかけるのだと思わされました。


紋佳🐻

読書