『茶柱の立つところ』


インスタグラムに現れる動物にほのぼのし、絶景に縮み上がる。

ベランダ菜園で生まれてきた野菜たちを親父気分で歓迎する。

気のおけない先輩たちとの「婦人会」で、暑苦しくなくお互いを応援し合う。

幼なじみとのバスツアーで「おつまみこんぶ」とバスガイドの素晴らしさを噛みしめる。

キャットタワーが捨てられなくてひとり途方に暮れる―

日常を面白がろうとする姿勢から生まれた、ユーモアあふれる着眼点に思わずクスッと笑ってしまうこと間違いなしの一冊。


『(略)やはり、多少格式張っていたり、ローカルチックであっても、喫茶店という体裁の店のほうが私はおちつく。
テーブルにお水とメニューが運ばれてくるような店。
喫茶店の手持ち無沙汰な時間もいいものだ。
しかしそれも侮れないのは、最近は席に着くなりタブレットを渡され、そこから注文してくれという店もある。
「コーヒーください。ホットで」といえば三秒で済むものを、わざわざタブレットの電池を消耗しながら、ページを操ってコーヒーを探して注文するのだ。なんの効率がいいのだろう。
だがその店が親切だったのは、私たちおばちゃん三人がタブレットに難儀していると、すぐに口頭の注文に切り替えてくれたところだ。
こういうハイブリッドなサービスは、高齢化社会には必要なことだろう。』

どこまでも、小林聡美さん。

小林聡美さんが匂いたってくる文章が、たまりません。

『おちつく』で、ひらがなを選択するセンスよ。


飾らない。

見栄を張らない。

ニュートラルな生き方が、お芝居にも滲み出ている、素敵な女優さんだなと改めて。


紋佳🐻

読書