『もし幕末に広報がいたら 大政奉還のプレスリリース書いてみた』


もし、あの時代に「広報」がいたら、日本の歴史は大きく変わっていたかもしれない―。

報道発表後に新たな情報が次々明らかになり、大炎上。事態はさらに悪い方向へ・・・。
政治、ビジネス、芸能界に至るまで、我々が生きる現代の日本は、広報対応のまずさが目に余ります。

しかし、あらかじめ「こうなること」が分かっていれば、もっと適切な対応がとれていたに違いありません。

本書は、誰もが知る日本史の大事件を題材に、マスコミ向けの報道発表資料である「プレスリリース」を作成し、企業や組織による情報発信の重要性や広報という仕事の面白さについて解説しました。

客観的な事実の記録と思われがちな日本史ですが、実はある一方の側からの視点(大抵は時の為政者)で綴られているケースが少なくありません。

もし、あの時代に有能な広報マンがいて適切な情報発信を行えば、歴史は全く違った方向に進んでいったかも・・・。

収録された抱腹絶倒間違いなしのエピソードからは、そんなロマンの香りすら漂ってきます。

さらに今回、歴史コメンテーターで東進ハイスクールのカリスマ日本史講師として知られる金谷俊一郎氏が監修を務めました。

単なるフィクションに終わらない、歴史本としても説得力のある内容で構成されています。


歴史的事件や、事実に関して、『もし自分がその関係者であり広報担当だったら』と仮定して、危機管理の5大原則「謝罪」、「事実関係」、「原因・経緯」、「影響」、「対応・再発防止」に沿ってプレスリリースを作るという面白い試み。

SNSで炎上しないように、マスコミに噛みつかれないように・・・と細心の注意を払った『報道者各位』から始まる文章は、丁寧すぎるほど遠回しな言い方であったり、お堅くビジネス的な言い回しであったり。

笑わずにはいられないのですが、思わず納得させられてしまったり。

さすがの感心してしまうクオリティでした。


第1章では起こってしまった事柄についてのプレスリリース。
『古今和歌集編集部』から出た、『編纂者・紀貫之氏の「女性なりすましについて」』は特に最高でした!笑

第2章では何らかの新制度(「大政奉還」、「武家諸法度」、「墾田永年私財法」など)についてのプレスリリース。
『「明治十四年の政変」をミュージカルにしてみた』が最高なので、ぜひ読んでほしい。

第3章はマーケティングに関連した広告活動。
松尾芭蕉を旅行系YouTuberに仕立て上げる話が好きでした。

第4章は広報テクニックについて。
『源氏物語』をベストセラーにする、刀狩体験ツアー(プレスツアー)の企画など、「ひとひねり」入れるテクニックが学べます。


Apple社で広報を担当していたベテラン著者が、そのノウハウをふんだんに盛り込み、歴史コメンテーター・東進ハイスクール日本史講師、金谷俊一郎さんがしっかり監修。

歴史が好きな人も、そうでない人も、ぜひ手に取ってほしい1冊です。


紋佳🐻

読書