『「ホーホー」の詩、それから』
ダウン症に生まれた静香さんの「こころ育て」の日々を描いて、多くの感動を呼んだ前作『「ホーホー」の詩ができるまで』から3年。
静香さんは支援学校の中学部に進学しました。
しかし、ここで新たな問題が起こりました。
支援学校のカリキュラムには、教科学習の時間がほとんどないのです。
小学生の頃もっていた好奇心・学習意欲は、日に日に衰えていきます。
見かねた両親が始めたのが「お母さん授業」。
これは、学ぶ喜びと感動を母娘で共有しながら取り組んだ学びの実践体験です。
オリジナルの教材づくりから独自の学習法まで、
「知の育て方」のノウハウを余すところなく公開したのが本書です。
障がいのある人、ない人、すべての人が、学ぶ喜びに目を輝かす、夢と感動とロマンの学習法です。
『これまで支援学級に通う生徒は重度の子供たちが中心で、未だにそうした意識を持っている先生たちも多く、発達指数で子供の能力を判断する傾向がある。
しかし、近年では支援学級が適当と判断された子供たちが支援学校に多く通うようになってきている。
その理由のひとつは、発達障がいなど比較的軽度の障がいのある子供たちが支援学級や支援学校高等部の職業学科に通うようになり、従来よりもレベルが高くなって、今までそこに通っていたような子供たちが進学できなくなっている状況がある。』
小学校の支援学級では、工夫された「教科学習」が行われていて、担任の先生たちの知的障がいに関する知識も豊富。
でも卒業後、中学校以上の先生には専門があって、全ての教科を教えるだけの知識やノウハウがなかったり、
そもそも支援学校では教科学習が行われていなかったり(全員で取り組めるレベルの作業が中心だったり)して。
『教育をすることが基本中の基本である学校が、職業訓練の場であってはならないと感じている。』
なんとか娘の学びの世界を狭めないようにと、楽しみながら、家族みんなでお子さんの学習に参加する姿、とても素敵でした。
「何度も同じことを学習する必要がある」といっても、同じ問題ばかりでは飽きてしまうため、問題の形式を変えたり、ゲームにしたり、創作活動にしたり、飽きない工夫が盛りだくさん。
『学びの成果はすぐ目に見えてはこないし、一生目に見える形で出てこないかもしれない。
けれども学びの中で得た感動や知識、努力や思考は心を豊かにし、その豊かな心はその人の人生をも豊かにするものであると確信している。』
知的障がいを持つ子供たちを取り巻く実態は、あまり良いとは言えないけれど。
ダウン症の娘さんを持つひとりの親として、信田さんの愛情あふれる言葉のひとつひとつが、胸に響いてくるのでした。
表紙は信田さんの娘さんの作品。
とても素敵な絵に惹かれて手にした本でしたが、静香さんが育んできた豊かな心そのものに惹かれたのだと、読了後しっかりと感じるのでした。
紋佳🐻
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