『さらさら流る』


28歳の井出菫は、かつての恋人に撮られた自分のヌード写真をネットで偶然発見する。

親友の百合や家族、弁護士の助けもあり、写真を消去するために動きながら、菫は元恋人・光晴との日々や彼自身を思い起こす。

彼と一緒にいたとき、私が私でなくなるような感覚にいつも陥っていた・・・。

ひとりの女性の懊悩と不安をすくいとりながら、一歩ずつ自分の身体を取り戻す姿を描いた会心作。


恋が終わって数年後、トラブルが起こっている時間軸と、いままさに恋に発展する予感で胸がときめく過去の時間軸が並行して、交互に進んでいくのがまた切ない。

未来で後悔していたとしても、恋が芽ばえる瞬間は、何もかもが幸せで。

恋の盲目さが際立つ構成でした。


ヌード写真がネットにばら撒かれ、周囲からの視線に敏感になる一方で、

『あんなふうに大胆に自分を彩ってみたい。ネイルだけではなく口紅やシャドウも。
控えめなカラーではなく、着たこともないようなビビッドな色をはみ出すような勢いで塗りたくりたいと思う。』

と、自分を派手に「変えたい」と思う心理。

とても、自由かつ不自由で、胸が締め付けられました。


デジタルタトゥーについて、とても考えさせられた物語でした。


紋佳🐻

読書