『家から5分の旅館に泊まる』


行き先は何も遠い地に限らない。近所の旅館やビジネスホテルにも、知らない世界が広がっている。

執着を解き放ち、自分の輪郭を失くしながら歩く知らない町。人に出会い、話を聞く。言葉に出会い、考える。それでもこの世界をもう少し見てみたいと思う小さな旅の記録。

話題作『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』でデビューし、今「最も注目すべき」書き手であるスズキナオ、初の旅エッセイ集。前向きな言葉、大きな声に疲れているすべての人へ。


『JR西日本が「サイコロきっぷ」という割引きっぷを期間限定で販売しているというニュースを見た。
サイコロを振るように、行き先がいくつかの候補のなかからランダムで決まるものだそうで、運賃は大阪をスタート地点に往復5000円均一。
いちばん遠くて福岡県・博多駅まで行くことができるという。(略)』

JR西日本のこのような企画、遅ればせながら初めて知りました!

家から徒歩5分先の旅館に泊まったり、
映画で観た場所を訪れたり、
思い出の銭湯が閉湯すると聞き、ひと目(ひと湯?)訪れたり・・・

「旅行記の連載」という枠組みの中で、さまざまな旅を楽しんでいる様子が素敵でした。

行動圏は主に西日本(大阪や兵庫)なため、西に疎い私には解像度が低めだったかもしれないけれど、それでも旅が好きで(もとい旅先で呑む酒が好きで)、というのが存分に伝わってきました。

締切に間に合わせるために、二日酔いで電車に揺られる姿は、実に涙ぐましく―そしてそれでも酒を呑まずにいられない―そんな人間味も良い味を出している旅行記ばかり。


文章の下にきれいに並んだ写真(簡単な解説つき)が、旅の臨場感を演出してくれてまた良し。


『もともと、私が長く付き合っている酒場ライターのパリッコさんが、共通の友人を介してラズウェル細木さんと交流を深め、パリッコさんがラズウェル細木さんと飲む場に私も呼んでもらって、と、人の縁に便乗させてもらうような形で知り合ったのだった』

本の内容、言葉の選び方、パリッコさんみを感じていたところ、なんとご友人であることが判明!

類は友を呼ぶのですね。


新書を厚く、大きくしたような「縦長のデザイン」も可愛らしい、スズキさんのこだわりと個性が存分にたのしめる1冊でした。


紋佳🐻

読書