『若旦那のひざまくら』
長谷川芹は百貨店に勤めるアラフォー。
彼女が惚れたのは、一回りも下の、京都老舗の御曹司だった!
結婚を目指すも、両親に拒まれ、若く美しきライバルに翻弄される。
それでも彼と一緒になるためなら、イケズなあいつらになんて負けないと誓うが―
人情小説の名手がおくる、
西陣を舞台に織りなされる愛と着物の感動物語!
「着物が苦しいなんて、大きな誤解よ。
たとえば洋服はさ、服に体を合わせなきゃいけないの。
ウエストが三センチ太くなったら手持ちのパンツ穿けないでしょ。
でも着物はね、女の体にそっと寄り添ってくれるのよ。
まるでもう一枚の皮膚みたいにね」
京都の老舗西陣織の跡取り息子の嫁になるべく、恋人より11歳年上というハンデを背負いながら、いかに一族に気に入られようかと奮闘する主人公のやる気が、読んでいて爽快です。
京都弁の会話術を身につけるべく、人間観察している場面では―
『「あれ、香水変えはった?えらいええ匂いやねぇ」
「ああ、すんまへん。ちょっとキツかった?」
「ううん、そういうわけやないけども」
「失礼、お手洗いで拭いてきますわ」
この会話をカフェで聞いていた芹は、思わず頭を抱えた。
話がまったく噛み合っていないように聞こえるが、当人たちは平然としている。
つまり「えらいええ匂い」に正反対の意味を含ませていたということか。
なんて高度なコミュニケーションスキルなのだろう。
不快感を伝えるのに、否定的な言葉を一つも使っていない。』
京都言葉の難しさや、着物、舞妓さんやお茶の世界・・・
さまざまな京都の文化にも触れることができて、
また主人公が、西陣織の未来を救うべく奔走する姿に心からわくわくします。
色々な角度から楽しめる物語でした。
紋佳🐻
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