『宙ごはん』
宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。
厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。
二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。
宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。
待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。
代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。
花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。
ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。
その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。
全国の書店員さん大絶賛!
どこまでも温かく、やさしいやさしい希望の物語。
ずっと読まなくちゃと思っていたこちらの町田さんの作品、ようやく拝読しました。
出るわ出るわ、『毒親』のオンパレード。
ありとあらゆる歪んだ親が登場します。
予備知識なしで読み始め、かなり重い展開に思わず、胸が締め付けられました。
どうして子どもに、価値観を、責任を、不幸を押し付けるんだろう。
そしてそれは、連鎖する。
愛情と履き違えた「呪い」には、吐き気がしました。
『ついこの間までは、助けてくれる大人に届くようにと声を上げて泣いたものだけど、喉とお腹にぐっと力を入れて、声を出さなくする方法を身につけた。
夜遅くまで仕事をしている花野に、迷惑をかけないように。面倒な子だと、思われないように。』
産みの母親と始まる共同生活の中で、期待しては裏切られ。
そういう人なのだと認め、諦めるも、やはり「母親」を欲して、絶望を繰り返す。
『ああ。わたしは、ほんとうはものすごく、寂しかったんだな。』
小さなからだで、必死に自分を守ろうとする姿に、ひとりの親として、やるせない気持ちになりました。
『感情のままに哀しいことを言ったからって、それが本心とは限らない。
本気で相手と向かい合っているから、疲れることもあるんだと、あたしは思うよ』
町田さんの言葉が、刺さる、刺さる。
この言葉にも、はっとしました。
本気で相手と向かい合っているから疲れる・・・子育てにも同じことが言えますね。
すとんと、落ちました。
『謝罪って、時には自分のためのものになってしまうんだね』
加害者が被害者に赦しを乞うことの残酷さに触れている部分も考えさせられました。
本人たちではない、残された家族たちのその後は、どちらも不幸で。
親と子が他人なら、犯罪者の家族もまた他人という事実に気づかされました。
どの作品読んでも感じることですが、町田さんのお話には、『祈り』が込められていますね。
この本が、たくさんの「親」に届きますように。
紋佳🐻
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