『世界の文字とことば』


ヨーロッパ諸言語で使われるラテン文字、コーランとともに広まったアラビア文字、多様なバリエーションを見せるインド系文字、そして、東アジアで独自に展開した漢字・・・

世界中の言語とそれを話す人びとの、歴史と文化が見えてくる!


大学時代、在籍していた学科(言語文化学科)内で選択できたゼミの中で、『少数言語』を研究するゼミがあり、

友人の何人かはそのゼミで、「絶滅しつつある言語」を研究していました。

「翻訳研究」の学科にいた私には、「どう書くのか」、「どう読むのか」すら分からない謎の暗号を読み解く言語を研究をする彼女たちが、とても格好良く見え、そんな時、「自分は文字が好きなんだなあ」と自覚。

だから、『少数言語は消えていくもの・保存しなくてはいけないもの』というイメージがあったので、20世紀に新たな文字が考案され、広められていたことに驚きました!

【オル・チキ文字】
インドのジャールカンド州、西ベンガル州、オリッサ州に分布する少数民族の言語(サンタル語)を書き表すための文字。

が、その1つ。

たった一人で文字を考案し、教員養成学校で講座を設けたり、劇場でパンフレットを配ったり、といった方法で、1970年代半ばまでには、かなりのサンタル人に浸透していたんだそうです。

すごい・・・最近の話とは思えません。


紀元前17世紀頃から使用されていた「古代ギリシア語」と、紀元前8世紀頃から使用されていた「現代ギリシア語」では、文法も語彙も大きく異なる、というのも面白いですね。

その古代ギリシア語を擬した人工的なギリシア語と、口語的なギリシア語の、どちらを国語とするかがかたまったのが1970年代半ばというのだから、こちらの歴史も最近のお話。

『ギリシア語は、古くて新しい言葉なのです。』

ロマンです。ロマンですね!!

ギリシア語は習得が難しいというイメージから、英語で、

It’s Greek to me.(「私にとってそれはギリシア語だ」)が、

「ちんぷんかんぷんだ」という意味で使われていて。

そんなギリシア語圏では、「それは中国語だ」という表現がそれに値するというのも、好きです。


他にも、ロシアの影響を多分に受けているモンゴルでは、その影響でキリル文字を使うようになったけれど、モンゴル人民共和国からモンゴル国になってから、民族意識が高まって、伝統的な『モンゴル文字』使おう!と国は推進。

ところが、現在の話し言葉に近いのはキリル文字ということもあって、国民には定着していない・・・そうで、国の政策が上手くいかないパターンもあったり。


驚いたのは、エジプト発祥のヒエログリフ。

象形文字で一見イラストのように見えるので、表意文字かと思っていましたが、9割は表音文字だそうです。

びっくり!


ビルマ語には、『キャキュキョ』の発音がないから、「トーキョー」は「トーチョー」になるとか。

かわいい!


その昔、「何に文字を刻んだか」によって、文字に特徴が出たというお話も面白いです。

石など硬いものに刻む場合は「直線的な」、葉など柔らかいものに刻む場合は破けないように「丸みを帯びた」特徴が現れたんだそう。

なるほど、興味深いです。


もともと文字を持たなかった言語が、表音文字であるラテン文字(ローマ字)を借りてくることで、話し言葉を文字にした、という例が多い中、

中国から漢字(表意文字)を借用してきて、

かな文字(表音文字)を作り出して、

それを組み合わせて使うようになった日本語は、世界的に見ても稀な言語なんですね。


また日本語における漢字が持つ、「音読み」と「訓読み」といった二層的構造が、言語にさらに深みをもたらしていることなどを知ることで、

改めて日本語、もとい「漢字・かな」文化が好きになるのでした。


「活字好き」として、大変たのしい本でした。

本を貸してくださったクラリネット吹きのお姉さまに感謝です!


紋佳🐻

読書