『雨の日は、一回休み』


おじさんはひどい。
でも、おじさんだってつらい。

男性は「そうなんだよ」と共感、
女性は「こんな人に困ってる!」と思わず頷く物語。

報われない「おじさん」たちの心情を時にコミカルに、時に切なく描き出す、連作短編集。


梅雨入りを迎えて、表紙に惹かれて手に取り、
各章のタイトルをみて、借りようと決めた一冊。

第一話 スコール
第二話 時雨雲
第三話 涙雨
第四話 天気雨
第五話 翠雨

どのお話にも、雨が印象的に描かれていて、その音や香りが、物語を演出してくれます。


登場するのは、ステレオタイプで、自分の考えを曲げることの出来ない、定年前後のサラリーマンや、世の中の不公平を嘆く契約社員のおじさんたち。

『「男を一週間も二週間も休ませて、会社を潰す気かって話ですよ。
奥さんはなにをしているんでしょうね」
(中略)
規模の小さな会社では、女性の育休に対応するのさえ精一杯だろう。
妻の産後の肥立ちが悪いならともかく、健康ならば取得する意味が分からない。』

セクハラ、パワハラ・・・
どの登場人物も、いまなら大問題になる思考の持ち主ばかり。

読み始めたときは、モヤモヤしたりもしたのですが、そういった考え方を、上から押し付けられながら何十年も働いてきて、ある日突然考え方を改めなさい、なんて酷な話なんだなあと。

時代の流れ、世代間のギャップなどに四苦八苦するおじさんたちの姿を見ていたら、怒りや呆れというよりも、同情を覚えました。


自分の感覚も、いつか世間とズレていくのかもしれない。

それは、何十年先だったり、今日明日に出会うかもしれない、価値観の多様性。

そんな日が来たとき、柔らかい自分でありたいなと思わされる物語たちでした。


紋佳🐻

読書