『5000グラムで生まれた女のちょっと気ままなお話』


とりあえず、のんびりと、はじめてみよう。

漫才したり、ボクシングしたり、お芝居したり、絵を描いたり。

たくさん人との出会いに支えられながらチャレンジを続けてきた芸人・しずちゃんが、その半生を赤裸々に綴る初の自伝的エッセイ!

カバーや挿絵も全編本人が描き下ろし、恋多き子ども時代や南海キャンディーズ結成、結婚までをのんびりと語ります。


その半生がドラマ化され、さらに注目を浴びている人気お笑いコンビ・南海キャンディーズ。

頭の回転が早く、気の利いたコメントで前へ出ていく山里さんの隣りで、いつもおっとり微笑んでいる、寡黙な印象のしずちゃん。

そのしずちゃんを深く知ることができるこちらのエッセイ。

読めば、しずちゃんも、山ちゃんも、その周りの方々さえも、みんな大好きになってしまう!

面白くて、感動的で、読後はぽかぽかと温かい、穏やかなきもちになりました。


お笑い芸人を目指す話から、女優の仕事をすることになった話、ボクシングでオリンピックを目指した話や、その時にコーチを担当していた梅津さんのがんの発覚、闘病、お別れのときの話―

どこを読んでも、しずちゃんの人柄で溢れていました。


月亭方正さんとの、このエピソードには、すっかり感動。

『先輩方は、私のボクシングをずっと応援してくれていた。特に印象深かったのは、月亭方正さん。がっつりボクシングをしていた頃のある日、挨拶をした時に、
「俺に何ができる?」
と第一声で言った。プライベートの付き合いはないけれど、私がボクシングをしていることをテレビで見て知ってくださっていたらしい。
「なんでもするから、なんでも言って」
私がこんなにボクシングに打ち込んで、お笑いをやっていないのに、力になろうとしてくださっている。』

かっこいいなあ。

こんなふうに、誰かのために、「なんでも言って」と言える人間でありたい。


『とはいえ、山ちゃんに感謝もしている。
私がボクシングをやめることをメールで報告した時、「おかえり」と返事が来たのだ。
「おかえり」なんてあったかい言葉、底意地が悪くて嫉妬深くて卑劣で嫉みの塊である山ちゃんから出た言葉!?と驚いた。』

しずちゃんが女優業、ボクシングにご縁があった期間で、山ちゃんに仕事があってよかった。

ピンとして「毒舌キャラ」を確立できたからこそ、山ちゃんに心の余裕、しずちゃんを思いやる余裕が出来たのだろうなと・・・

自分も、似たような仕事をしている(仕事がない時期は本当に心を病みそうになる)ので、山ちゃんの変化が痛いほど分かります。


「欲や目標に向かって邁進する山ちゃん」と、「努力家で様々な才能に恵まれている穏やかなしずちゃん」。

素敵なふたりがまた、コンビを組めたもんだと。

まったくの部外者ながら、感動で心震えるエッセイでした。


紋佳🐻

読書