『ひとんち』


世界は本当の姿を隠したままで、決して正体を明かさない。
闇はどこまでも絢爛で、現実は色褪せて退屈だ──。

恐怖と異形、人間心理の暗部にこだわりぬいて紡いだ全八編。

日常が少しずれてできた隙間から、圧倒的な混沌が迎えに来ます。


一体どのような恐ろしい物語が待っているのだろうと、恐る恐る読み進めた割には、そこまでの恐怖は感じずに読了。

でもどことなく気味が悪かったり、嫌悪感を抱かせにくる感じはあり。


こういう物語の入口は、とても好み。

『不幸の手紙についてそんな風に想像を巡らせていた一昨年の秋、ぼくは知人の知人、植松恭平なる人物から、とても興味深い話を聞いた。
当時は編集プロダクションに在籍していた同世代の編集者で、ぼくがホラー小説で作家デビューし、続いて『リング』を踏まえた作品に取りかかってると知って、「聞いてもらえますか」と打ち明けてくれたものだ。
場所は笹塚の小さな居酒屋だった。』

良いですね〜こういう流れるような導入。

いつの間にか話の中に引き摺り込まれていく感じ。
落語を聞いていて私がいちばん好きなのは、オチでも中身でもなくて、この「カチッ」と本題に入る瞬間。

ああ、たまりません。


(こんなに入り込んでしまって、大丈夫!?大丈夫・・・!?)と、終始、怯えながらお化け屋敷を進んでいくような感覚でした。

そこまで恐くはなかったけど、ビクビクしながら読み進めることになるので、読み終えたあと、どっと疲れを感じる、そんな作品集。

ゾクゾクしたい人にはおすすめ。

でも、刺激的なホラーが好きな方は物足りないかも。


紋佳🐻

読書