『しあわせしりとり』


しあわせは、つながっていく!

子供の頃の思い出、見ることのない未来、こぼれ落ちる日々・・・

あんなこと、こんなことが、しりとりのように連鎖する。

朝日新聞連載「オトナになった女子たちへ」に加筆・修正したエッセイと、3本の書き下ろしを収録した、とっておきのエッセイ集。


これ、編集者さんが素晴らしくて。

過去のエッセイと新作3本、合計47本のエッセイ。
このすべてのタイトルが、「しりとり」になっているのです・・・!

タイトルを読んでいるだけでも、たのしい。


『その自転車は意志を持っていた。右斜め四五度の方向に行きたがってしょうがないのである。父の自転車であった。』から始まる「母とわたしと自転車と」というエッセイ。

締めくくりは、
『わたしが父に買った赤い自転車は愛されなかった。愛されないどころか、父は怒って結局乗らなくなった。思えば、右斜め四五度に進む自転車はどことなく父に似ていたような気がした。』

まっすぐに進まなくてもいい。

それが、その人らしさなのだからと、愛情を持って誰かのことを受け止められる、そんな大人に私もなりたい。


『羽田空港へは、毎度、東京モノレールを利用している。モノレール浜松町駅から乗り込み、ビル群を抜ければ次第に空が広くなってくる。
今から旅に出るんだなぁ。この景色を車窓から確認し、ようやく、からだから日常が剥がれていく。』

「からだから日常が剥がれていく」この表現力よ。


『わたしは、その夜、正しく、空しかった。空があって本当によかったと思う。もしも空がなかったら、人は空しいときにどこを見るのだろう?』

「虚しい」ではなく、「空しい」。

漢字がちがうだけで、印象ががらりと変わる。

その選択が、とてもミリさんらしくてすきです。


ミリさんの作品群はどれも、誰かの空しいきもちを、決して否定しない。

だから、時々読みたくて堪らなくなる。


紋佳🐻

読書