『うしろむき夕食店』


二階建てのレトロな洋館に、ステンドグラスの嵌め込まれた観音開きの扉。

ドアの両側には二つずつ背の高い格子窓。
そこから見える満月のような照明と、おいしそうな香りが漂ってきたら間違いなし。

そこが「うしろむき夕食店」だ。

“うしろむき”なんて名前だけど、出てくる料理とお酒は絶品揃い。

きりりと白髪をまとめた女将の志満さんと、不幸体質の希乃香さんが元気に迎えてくれる。

お店の名物は「料理おみくじ」。

今宵の食事も人生も。いろいろ迷ってしまうお客さんに、意外な出会いを与えてくれると評判だが―。


『お通しは洋風きんぴらごぼう。アンチョビ醤油で仕上げたというきんぴらは、粒マスタードのぴりっとした辛みがきいて、ビールによく合う。』

こんなお通しが出てくるお店、通ってしまいます!


ラジオパーソナリティたちによるコンペ、
医薬品営業マンによるシンポジウム、
アルバイトをし、妻の収入に支えられながら営むアンティークショップ・・・

仕事がうまくいかない社会人たちが、「うしろむき食堂」でひく『くじ』によって、ランダムに出てきた、おいしい料理にヒントをもらい、救われていく・・・。

すきです!


一見さんには分かりにくい、入り組んだ路地の一角に佇むお店、迷いながら目指す人を、月明かりに照らされた野良猫?迷子犬?たぬき?・・・のような動物が導く、という各ストーリーの導入も、神秘的で。


水仙、福寿草、蓮華に菖蒲、鬼灯、桔梗、萩と菊。

四季折々の草花が描かれたステンドグラスが、懐かしい明かりを放つレトロな外観。

女将さんとホールスタッフがおしゃれに着こなす「着物の描写」もとても素敵です。


『ここは少し昔の、なつかしい時代を思い出すようなお店だから、うしろむき夕食店と呼ばれている』

「ふんわり柚子の香るおしぼり」で、私も手を拭きたい!


『つながるんですよ、きっと。おいしいものは、誰かと分かち合いたくなりますから。

一緒においしいものを食べたい相手は、大切なひとでしょう?』

すっかりうしろむき夕食店のファンです。


紋佳🐻

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