『カケラ』


美容外科医の橘久乃は幼馴染みの志保から「痩せたい」という相談を受ける。

カウンセリング中に出てきたのは、太っていた同級生・横網八重子の思い出と、その娘の有羽が自殺したという情報だった。

少女の死をめぐり、食い違う人びとの証言と、見え隠れする自己正当化の声。

有羽を追いつめたものは果たしていったい―

周囲の目と自意識によって作られる評価の恐ろしさを描くミステリー長編。


お久しぶりの湊さん。

お得意のモノローグ形式で構成された、何とも言えない後味の物語でした(好きです)。


一人称形式で、各章、重要人物たちが、自身の過去や意見を述べるのですが、エピソードの時間軸が、二世帯(さらに小学生・中学生・・・と異なる時代)にわたっており、大変頭を使いました。

各々の主観・記憶の中で生まれる矛盾、すれ違いに、事件の全貌を暴きたい読者は揺さぶられ続けます。


モノローグ形式だと、語り手の感情がダイレクトに伝わってくるので、読者は俯瞰して眺めるというより物語の中に引きずり込まれてしまう。

一方で、想像の余地、余白も多いので、実は地の文で状況を整理できる構成よりも、情報量が多くて、脳内処理が大変です。

久々に、読み手の力を要求してくる作品を読みました。


読者が苦労して真実を掴み取りに行った、その先に、湊さんが用意した光景、余韻、後味の悪さ。複雑さ。

これだからイヤミスはやめられません。


紋佳🐻

読書