『汝、星のごとく』
風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。
ーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。
ようやく読みました!
『暁海とは不思議なほど話が尽きない。
親のこと、将来のこと、自分のこと、会話は縦横無尽に飛び、それゆえすべての話が中途半端に終わる。
泥棒に荒らされ、部屋中の引き出しが開きっぱなしになっている部屋のような関係だ。
それがここちよく、どれだけ話しても物足りない感じで終わってしまう。
だからまた話したくなる。』
波長の合う、ティーンふたりの関係性が、瑞々しく描かれていました。
後から思い返せば、何を話したか覚えていないくらいの他愛もないお喋りの様子。
凪良さんの繊細な表現力を感じずにいられません。
『きみのそれは優しさじゃない、弱さよ』
蝉の声、生ぬるい夜、うだるような暑さの夏の日に、この本を読めてよかった。
きかないようで替えのきく表現の世界で、そこまでしてくれる?と疑いたくなるほど情熱的な編集者たちが登場するのは、フィクションだなあという感じもありましたが(職業柄夢が見られないのかもしれない)、ともすれば絶望しかない物語に、微かな人の温もりを感じさせてくれる、貴重な希望でした。
不安で押しつぶされそうな世界で、幸せだと感じる瞬間を、取りこぼさずに抱えて生きていけたら・・・人生を全うできたと満足できるのかな。
『人は群れで暮らす動物です。だからなにかに属さないと生きていけない。
ぼくが言っているのは、自分がなにに属すかを決める自由です。
自分を縛る鎖は自分で選ぶ』
『自由は気持ちいいけれど、自由で居続けるには力がいる』
自由というパッケージに包まれた自己責任。
令和を生きるすべての人を、叱咤激励してくれるような物語でした。
紋佳🐻
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