『ツユクサナツコの一生』


マスク生活2度目の春を過ごす、32歳・漫画家志望のナツコ。

社会の不平等にモヤモヤし、誰かの何気ない一言で考えをめぐらせ、ナツコは「いま」を漫画に描く。

描くことで、世界と、誰かと、自分と向き合えるから。

“わかり合える”って、どうしてこんなに嬉しいんだろう―。

自分の「好き」を大切に生きる、「あなた」に贈る物語。


漫画家・ツユクサナツコの日常と、その作中作である漫画の世界が交互に読める、二度美味しい構成になっています。

ミリさん自身が、日常で起こったこと、見聞きしたことを、どんな風に漫画に落とし込んでいるのか、その瞬間に立ち会えているようなきもちになりました。

でも日常の中で感じたことを、全くそのまま漫画にしている訳ではなくて。

もっと深堀したり、展開させていったり・・・

漫画のオチに対して、ツユクサナツコ本人がツッコミを入れたり、語りかける様子も愛おしいのでした。


「セミて仰向けに死ぬらしいで」

「へーそういうもんなんですか?」

「空見て死ぬのもええかもねぇ」

「そうですねぇ。ええかもしれませんねぇ。
あ、けどセミの目背中側にあるし、見えんの土かもしれませんねぇ」

「そら、なお、ええやん。
自分が長い間おった土のほうが、セミには思い出あるやろし」

あー好き。


ミリさんがコロナ禍で感じたこと、願ったことが散りばめられた、祈りのような一冊でした。


紋佳🐻

読書