『波』2022年2月号


『私のような小説家には演劇というものに抜がたいコンプレックスがある。小説より詩や劇のほうが上だという気持が心の底にある。』

そう語った遠藤周作の未発表だった戯曲三篇のうちのひとつ、「切支丹大名・小西行長」が掲載されていました。


劇団「雲」の演出家・俳優だった芥川比呂志の指導を受けながら書き上げたという戯曲は、台詞の一つ一つに、人物の想い・魂が感じられて、読んでいて心が動かされます。

「歴史の中に架空の人物を持ち込む」のが、遠藤周作が得意とした手法だそうで、今回の戯曲の中では小西行長の侍女「あかね」という女性が放つ存在感が物語に深みをもたらしていて、とてもよかった。

場転毎に挟まれる「少年たちの聖歌」がまた効果的で、教会の「ロウソク」の灯りが、観客をぐっと引き込むに違いなく。

その上演を観てみたいと心から思いました。

次号の後半が待ち遠しいです。(まだ前半しか読んでいないのにこの感想。笑)


民族学者であり、レンコン農家でもある野口憲一さんの文章「カイワレ大根の長さが揃っているのはなぜか?」も面白かった。

人の手をほとんど介さずに、ハイテク技術を用いた大型施設での農業に一石投じる一冊『「やりがい搾取」の農業論』、ぜひ拝読したいです。


紋佳🐻

読書