『犯罪者 クリミナル 下』


浮かび上がる一人の男の驚くべき犯罪計画。
そして、謎を追う三人が一発逆転をかけて臨む、メディアと警察を駆使した奇策とは!?

息つく間もない、圧巻のノンストップ・クライム・サスペンス!


こんなにも「非現実的で現実的」な小説、いままで読んだことがありません。

実際にあるわけがない、と思うような事件が、細やかな描写によって、「まさに実際に起こったら世間は、企業は、政治家はこうなるであろう」ことが、「その場で見てきたかのよう」に生々しく書かれていました。

これが小説デビュー作!?
文才能力によるもはや暴力でした。


お互いの裏のかきあいの中、敵味方、登場人物がこんなにもバラバラに行動していながら、時系列がきれいに整頓されていて読みやすい。

50ページごとに伏線回収劇が繰り広げられ、紙をめくる手が止められなくなりました。

起承転結の「転」って、こんなに繰り返しても許されるんでしょうか、と途中で作者である太田さんを憎んだほど、感情が振り回され、この本を読み始めてから読み終えるまでの2日間は、日中も物語に取り憑かれて、支配されました。

まさに本を介した暴力。(褒めています)


真の勇気と正義を握り潰しているのは、腐った政治家、大企業だけではなくて、
マスコミに容易く操られてしまう私たち自身なのだということを、痛いほど突きつけられました。


こんなにも眠る時間が惜しく、日中も頭の中が物語でいっぱいになるほど面白かった本はひさしぶり。

『息つく間もない』って紹介される作品は、しかし大概、息をつけたりするんだけど、
今回は本当に、ずっと息できませんでした。

活字を追うのが恐ろしくなったほど。


紋佳🧸

読書