『骨を彩る』


何も喪わず、傷つかず生きている人なんていない―

色彩をなくした過去、記憶、日々に、あらためて向き合い、彩ってゆく希望の物語。

妻を喪い、少しずつ妻のことを忘れてしまっている自分に気付く夫(「指のたより」)、
恩師の葬儀に現れないかつての友人との過去のやりとりをたどり、今彼女に何かを言わんとする女性(「古生代のバームロール」)、
息子がいじめられているかもしれないという不安を抱えながら、自身の過去の記憶に向き合う母親(「バラバラ」)、
ゲームの中でしか雄弁になれない童貞(「ハライソ」)、
転校生のある宗教を信仰している少女と出会い自分たちを苦しめる"普通"について模索する、母親を喪った少女(「やわらかい骨」)など、

心のどこかで骨がひっかかっているような、自分の骨が足りないような、何か不安定な喪失感を持った登場人物たち。

この物語は、読む人によって涙する場所が違う、不思議な物語り

ただ、読後に残るのは鮮やかな希望。

注目の新鋭による希望の物語をお届けします。


『そうか、と柔らかい相づちが返り、円の描き始めと終わりが繋がるように、ゆるやかに会話が絶えた。』

くぅ〜。

「強く、強く、なんのうたがいもなく怒ったり、責めたり出来る、のは、その物事に関わりがない人」

この表現、そして視点!

あーーー彩瀬まるさん、好きーーー。

って、どの作品を拝読しても、必ず、まず最初に思います。

なんなら読みながら、その言葉のうつくしさ、豊かさに、悶えます。

読んでしまうのが勿体なくて、なかなか他の作品に手が伸びないくらい、好き。彩瀬さん。


分かり合えない苦しさも、負った傷も。

傷ついていない人なんて誰も登場しない。

読めば、穏やかに人生と向き合っている自分に気がつきます。


紋佳🐻

読書