『近くも遠くもゆるり旅』


近場の新宿から憧れだったスイスまで、どこに行っても、のんびり自由な旅エッセイ。

なんか疲れたな。と思ったとき、馴染みの旅先があるのはいいものだ。

行ったことのないところへ旅して見たいな。
と思ったときの、涼やかな気持ちもいいものだ。

つまらない旅はない。
たぶん、なにかはつまっている。

近くも、遠くもゆるゆると。


『ふいに淋しさが広がっていく。
昨日の旅がすでに過去になっているのが淋しいのである。
わたしの人生は、もう未来より過去のほうが多い。
そのことにびっくりしているのは自分である。』

とてもよく旅を言い表しているこの一節。

感動は、その瞬間から過去のものになる。

普段忘れながら生きている、そんなことを、静かに実感させてくれるのが、旅。


自分という人間が、この世から浮いているような、不在のような感覚。

旅は死を体験することと似ていると仰っていたのは、ミリさんだったか。

時間もお金もかかる旅だから、なかなか腰が重たいのだけれど。

ただ明るいだけの旅行記ではないから、益田ミリさんの旅は、たくさんの人に届くのだと思います。


読めばふらりとどこかへ行きたくなる、そんな作品でした。


紋佳🐻

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