『夜叉神川』
「ここは夜叉神川の上流。
両側に高い崖が迫る谷、聞こえるのは川の音と、山で鳴く鳥の声だけだ。」
(『川釣り』より)
「昔、亡くなったおばあちゃんが教えてくれた。魂という漢字に鬼の字が入るのは、もともと人の心に鬼が棲んでいるからだと。」
(『鬼が守神社』より)
全ての人間の心の中にある恐ろしい夜叉と優しい神、その恐怖と祝福とを描く短編集。

安東さん、やはり良い。
目に見えない存在がもつ、恐ろしさや救いを、多感な子ども目線で描くのが、本当にお上手。
5本目の『果ての浜』が特に好きでした。
「戦争の悲惨さを、関係ない自分たちに押し付けないでほしい」という、子ども目線ならではの憤懣を描きつつ、
「戦時中、運命に身を委ねるしかなかった同年代の子どもたち」に想いを馳せることで、戦争に対する恐怖・悲嘆が生まれてゆく展開がとても良かった。
大人が読んでもたのしい児童書は数あれど。
昨年ハマって以来、お勧めの安東みきえさんです。
今年も安東さん、追いかけます。
紋佳🐻
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