『やわらかなレタス』


食事の幸福がなかったら、人生はどれほど味気なくなるだろう。

小説、旅、身辺のよしなしごとを、繊細に、かろやかに描きとめた随想集。


江國さんの感性豊かで自由な(一方で不自由な)日常を綴ったエッセイ本。

私自身も、音があふれる環境(屋外のみならず、室内でも、テレビをつけながら他の音楽を流す、複数の人が同時に大声で話すといった猥雑さ)が苦手で、音と音がぶつかり合う空間にい続けると、途端に頭痛が生じたり、気分が悪くなったり・・・それは不自由な体を持っているのですが、

江國さんもその類の人間なのだなということがよくわかりました。

そこには「自分の限界を知っている(思い知らされているともいう)」からこそ正確な、独自ルール、習慣が存在していて。

けれどそれらを他人に理解、共感してもらおうなどとは、江國さん自身も思われていないのがわかります。

身近な家族がわかってくれていればそれでいいといったように。(私の夫は私の体質について「音酔い」と呼んで理解してくれています)


暮らしの中で浮き上がってくる、自分という人間の輪郭を―たとえそれが常識とずれていたとしても―たいせつにしなければ、健やかで、しあわせな生活は送れないのだからと、そんな人種を肯定してくれるような一冊でした。


紋佳🐻

読書