『海をあげる』


「海が赤くにごった日から、私は言葉を失った」 

おびやかされる、沖縄での美しく優しい生活。

幼い娘のかたわらで、自らの声を聞き取るようにその日々を、強く、静かに描いた衝撃作。


『弟は、遺体を片付けるために外に出て爆撃を受けて死んだ。妹は、親戚の子どもたちのミルクを取りに行って帰ってこなかった。父親は、一家のお金を女性に託したあとで爆撃を受けて死んだ。親戚のお姉さんは、子どもと自分は何があっても一緒にいるからここに置いていきなさいと言って、そして子どもたちと一緒にいなくなった。
宜野湾市の自然壕を出た女性の家族と親戚の二三人は、アメリカ軍に投降を呼びかけられた米満市の喜屋武岬では四人になっていた。』

読んでいくうちに、手の震えが止まらなくなりました。

色んな戦争体験の話を読んだことはあったけれど、親戚、身内が、避難生活の中でいかにして減っていったかを語る言葉には、無意識のうちに身体が震えてくるほどの衝撃と重みがありました。


『そうやって聞き取ったほとんどは、しばらくのあいだは書くことができないことだ。
語られることのなかった記憶、動くことのない時間、言葉以前のうめき声や沈黙のなかで産まれた言葉は、受けとめる側にも時間がいる。
逡巡と沈黙の時間をふたりでたどり、それから話はぽつんと終わる。そして最後は静かになる。』

上間さんの書く言葉に、混じりけを感じさせないのは、そうやって受け取った言葉を、透明のフィルターで受け止めて、ゆっくり抽出しているからだと思う。


子育てをしながら綴る、辺野古の話。

抗議をおこなうこと、黙ること、関心をもつということ―

沖縄のさまざまな問題について、当事者の目からみた事実を、たいせつに受け止めて。

私はどう思うのだろう。どうしたらいいのだろうと、じっくり考える。


紋佳🐻

読書