『もぎりよ今夜も有難う』


映画と映画館が好きすぎるあまり、かつて“もぎり”として働いていた俳優・片桐はいり。

若きもぎり嬢だった当時の追憶、1980年代から現在のシネコンに至るまで、
今も変わらぬ映画への想い、そして映画館への想いを、
映画専門雑誌『キネマ旬報』にて、4年余りにわたりあますことなく書き綴った連載『もぎりよ今夜も有難う』、待望の書籍化!

2009年第82回キネマ旬報ベスト・テン「読者賞」を受賞。

『わたしのマトカ』『グアテマラの弟』に続く、片桐はいりさんのエッセイ集。

各お話のタイトルが映画のタイトルにちなんでいて、

『Wの喜劇』(「Wの悲劇」)
『パリの空の下ケムリは流れる』(「パリの空の下セーヌは流れる」)
『五年目の上着』(「七年目の浮気」)
『ハウスダスト・メモリー』(「スターダスト・メモリー」)

などなど・・・。

そのタイトルにちなんだ「オチ」や「余韻」の残る面白さは、読んでいて、まるで落語を聞いているようなテンポ感と幸福感がありました。


お盆とお正月が近づいてくると、「また寅さんの季節かあ」と『もぎり』の人たちがため息をつきながら華やぐような、そんな文化があったことも知らなかったし、
入れ替え制のなかった時代、働くサラリーマンが仮眠するために途中入退場したりしていたことなど、昭和の時代の映画館の様子が垣間見れたり。

仕事やプライベートで訪れた土地で、必ず映画館を訪ね歩くはいりさん。

映画館を通して出会う街、ひと、歴史・・・とても素敵な旅をされているなあとしみじみ感じ入りました。


紋佳🐻

読書