『しずく』


恋人の娘を一日預かることになった私は、実は子供が嫌いだ。

作り笑顔とご機嫌取りに汗だくになっても、ぎくしゃくするばかり…。

ふたりのやり取りを、可笑しく、そして切なさをこめて描く「木蓮」。

恋人同士が一緒に暮らしたことから出会った二匹の雌猫。

彼女たちの喧嘩だらけの日々、そして別れを綴る表題作。

ほか、日だまりのように温かい「女ふたり」の六つの物語。


なるほど、どの短編も「女ふたり」の話なんですね・・・!

(読んでいる間は気がつかず)


『日だまりのように温かい』と紹介されているこちらの本ですが、私には温かさというより、「ままならない世の中への憂い」を、全6篇から感じました。

職場での不倫がばれ、居場所がなくなり、退職したまま旅をしている女性(「影」)、

浮気をされているかもしれないが、恋人を失うかもしれない可能性を前に、問いただすこともできぬまま、二週間後に同棲先である新居への引っ越しを控えている女性(「シャワーキャップ」)―

などなど。

どのお話も、人生におけるままならない流れ、渦の中にいる女性たちが描かれていて、そういう着眼点を持つ西加奈子さんって、やっぱり独特だなあと思いました(好きです)。


長編で読む西加奈子さんも、それはそれは面白いのですが、初めて短編集を手に取ってみて、その手札の多さに感服しました。

他の短編集も、拝読してみたいと思います。


紋佳🐻

読書