『耳に棲むもの』


耳の中に棲む私の最初の友だちは、涙を音符にして、とても親密な演奏をしてくれるのです。

補聴器のセールスマンだった父の骨壺から出てきた四つの耳の骨(カルテット)。

あたたかく、ときに禍々しく、静かに光を放つようにつづられた珠玉の最新作品集。

オタワ映画祭VR部門最優秀賞・アヌシー映画祭公式出品。

世界を席巻したVRアニメから生まれた「もう一つの物語」。


表紙に惹かれて、あるいはタイトルに惹かれて。

静謐の中に不思議さと不気味さが混在した、小川さんらしい空気感の作品でした。


たいせつなものをしまい込んでいる「クッキー缶」がまた、決して綺麗ではなくて、不格好なのだけれど、それが正しい居住まいのように思えて。

一見ナンセンスのように見えるだけで、小川さんはどこまでも正しい。


調べていたら、初版発行の前年に、先にアニメ化されている作品でした。

『講談社VR』って何ですか、初めて知りました。

世界観がとてもよく表現されているアニメでした。絵も音楽も。

岡田将生さんの声がとても良い。

それにしてもVRアニメーション・・・新時代ですね。


紋佳🐻

読書